病態僧帽弁閉鎖不全症は、犬においてもっとも一般的な心疾患です(他にも心臓弁膜症や僧帽弁逸脱、僧帽弁逆流などと呼ばれることがあります)。本疾患は僧帽弁の肥厚や僧帽弁に付着する糸(腱索)の断裂、心拡大に伴い弁が届かなくなることなどにより生じます。一部の犬では僧帽弁(左心房–左心室間の房室弁)だけでなく、三尖弁(右心房–右心室間の房室弁)などその他の弁でも生じる可能性があります。僧帽弁閉鎖不全症による僧帽弁逆流は左心系への負荷となり、左心系の過度な拡張や血流障害を生じる危険性があります。進行してくると、咳・疲れやすい・呼吸はやい(目安:安静時呼吸数 > 40 回/分)などの症状が認められます。診断方法身体検査(聴診による心雑音の有無)、胸部X線検査、心電図検査、血圧、心臓超音波(心エコー図)検査などにより総合的に診断いたします。とくに、心臓超音波検査は心臓や弁の動きをリアルタイムで評価可能であり、動物への負担も最小限です。一定以上の設備と技術が必要となりますが、本院では循環器専用の超音波検査装置もありますので、より正確な診断や病態評価が可能です。検査日は常用薬やご飯は食べてきていただいて構いません。どの薬を、どの時間帯に飲んできたかをご共有ください。治療方針基本的に飲み薬による治療を検討いたします。単に心臓薬といっても様々な薬剤があり、それぞれの症例の心臓の状態に合わせて最適な治療をご提供いたします。治療効果判定は2~4週間後程度でさせていただきます。心疾患病態が安定しているようであれば、徐々に検査スパンを伸ばすことも可能です。近年、僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術も可能となりつつあります。手術をご希望される場合は、専門の施設と連携して治療させていただきますので、いつでもご相談ください。手術適応なのか?リスクは?などご不明な点も多いと思いますので、いつでもご相談ください。まとめ中高齢以上の小型犬のほとんどが弁膜症を有していると考えて頂ければと思います。弁の変性や逆流の程度次第で、急激に悪化するリスクもあるので、定期的な健康チェックをするようにしましょう。また、心臓薬は欠かさず継続していただく必要があります。お薬の追加処方が必要な場合は余裕をもってご連絡ください。