尿石症について尿石は尿中に含まれる老廃物やミネラルが結晶化し、さらに尿路内に停滞する有機物と結合することで形成されます。発生部位にもよりますが、炎症を惹起したり、閉塞の原因となることがしばしばあります。尿石はそのミネラル組成によって分類可能であり、犬・猫で代表的な尿石症は、ストルバイト尿石症、シュウ酸カルシウム尿石症の二つになります。ストルバイト結晶が生成される背景として、犬では特に、尿路感染がある場合が少なくありません。また、尿中のpHがアルカリ性に傾くことで結晶の発生は促進します。そのためストルバイト尿石症の治療法は、抗生剤による尿路感染のコントロール、形成してしまった尿石を溶解させるためにpHを低く保ち、尿中のリン酸やマグネシウムの量を調整した食事への変更が必要となってきます。シュウ酸カルシウム結晶は食事管理や内科療法によって結石を溶解する治療法が開発されておらず、体内から除去するために外科的処置が必要となります。手術方法は結石の存在部位によって異なり、腎結石・腎盂結石に対しては腎切開術または腎盂切開術、尿管結石に対しては尿管切開術、膀胱結石に対しては膀胱切開術、尿道結石に対しては尿道切開術が適用され、切開部から結石の摘出処置を行うのが一般的な手術法となっています。尿管内で完全閉塞を起こしており腎後性高窒素血症または水腎症や水尿管を引き起こしている場合は、緊急手術として腎瘻チューブやSUB(subcutaneous ureteral bypass)システム設置術を行います。SUBシステムとはSUBとは、結石などが原因で完全閉塞を起こしている症例において、尿管とは別で腎臓と膀胱の間を管で接続するシステムです。腎臓で作られた尿は、シリコン製のカテーテルを通り、一度皮下に出てポートに繋がり、再度腹腔へと戻り、膀胱に流れます。SUB設置術は麻酔下での処置になりますが、実際の手術時間は比較的短く、従来の術式と比べ、比較的合併症が少ない術式とされています。最大のメリットとして、皮下に設置されているポートから、定期的な洗浄を行うことで、カテーテルが閉塞しないよう手軽にメンテナンスが行える点があげられます。反対にカテーテルが結石や血餅により閉塞してしまった場合には、SUB再設置が必要となり、また、経年劣化・老廃物の付着による不調が見られた場合には定期的な交換が必要となります。個体差もありますが平均で2~3年で交換、4~5年と長期的に使用可能の場合もあり、反対に閉塞などが原因で1年で交換を強いられるケースも稀にみられます。食事管理による尿石予防を行いつつ適切なメンテナンスを十分に行うことで、閉塞のトラブルを防ぐことができます。症例実際にご紹介する症例は10歳避妊雌、心臓病治療中の猫ちゃんです。元気食欲の消失、嘔吐が主訴で来院。血液検査にて腎数値の急激な上昇、超音波検査にて右の尿管に明らかな結石による閉塞所見がみられ、腎盂の拡張がありました。<尿管閉塞時の腎臓(初診時)><SUB設置後の腎臓(退院時)>SUB設置術後1週間ほど静脈点滴を続けながら治療を行っていき、症状は改善、上昇していた腎数値も正常値に落ち着き、無事退院しました。まとめ尿管閉塞による急性腎障害は、時間の経過とともに腎機能が落ちてしまうため、緊急性が高く、早期の治療が大切です。SUBシステムは日本ではまだ広く普及していない治療法ですが、内科的治療が困難な症例でも腎機能の維持を見込める最新の治療となります。患者様の実際の状況に応じてご相談になりますので、お気軽にお問い合わせください。